三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」

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世界の政治も、日本の政治もどんどん動いています。それなのに、日頃目にするニュースは、どこか通り一遍の話が多い。メディアには様々な規制があるし、多くの識者はどうしても「陣営トーク」をしてしまう……。私が、このメルマガでめざすのは、「自分で考えたい」と思っている人に材料を提供すること。政治の世界には、元々「正解」なんてありません。思想があって、利害があって、思い込みがある。自分で考えるためには、多くの情報と視点に触れる以外にないのです。アカデミズム(=学会)と、メディアと、政治エンターテイメントが交差するところで生きている私が、日々何を考え、感じ取っているか。日本以外にも情報源を広げながら、左右両陣営の「型」にはまらない、ありきたりの政治の読み方とは違う、「異物感」を提供できたらと思っています。どうぞ、よろしくお願いします。

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言うまでもないことですが、政治は私たちの暮らしに密接です。その一方、選挙のたびに政局に振り回され、結局は「無党派層」を自認し、政治に距離を感じている人も多いはず。本メルマガでは、三浦さんの本分である国際政治学者としての知見をもとに、混迷する政局と日本社会を取り巻く状況を読み解くための情報をお届けします。また、話題となっている政治ニュースを取り上げ、その裏にある背景を、メルマガ読者だけにお伝えしてまいります。

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 三浦瑠麗の
「自分で考えるための政治の話」
[Vol.1]2017年10月18日配信
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◆本論「資本主義からの逃走」◆◆◆◆◆◆◆◆

■時代を読み解く「軸」を持つ

 みなさま、初めまして。三浦瑠麗です。本メルマガの中では、もちろん、その時々のニュースについて解説をしていきたいと思います。とはいえ、国内政治上における政策論も政局論は永遠に続いていきます。そして、国際政治ではもっとプレイヤーが多様な分だけ変化のスピードも速くなってきます。リアルな世界を生き抜くには、その変化を把握し、その変化に適応しなければいけません。同じ場所に留まるためにも必死に走り続けなければいけない感覚、とでも言いましょうか。それだけでは、疲れてしまうので少しでも先読みしないといけない。先読みする上で、重要になるのが世界を見る「軸」を持つことだと思っています。

「時代観」とか、「世界観」と言い替えても良いかもしれません。この混沌とした世界で、日々いろんなことが起きるけれど、それぞれを解釈していく根っこにあるもの。メルマガの本論では、私が日々考えていることを、読者の皆様に共有しながら、同時進行で、一緒に考えていけたらと思っています。答えめいたことを最初に申し上げると、今、私が重要だなと思っているのは「資本主義」というものとどのように向き合っていくかということです。

 私が、政治について考えたり、書いたりするときに一番大事にしていることは、「時代の問いに、時代の言葉で答える」ということ。我々は、生まれてくる時代を選べないけれど、その時代を生きながら何の問題に取り組むかは選べます。その時々において、最も重要と思う問いに正面からぶつかるべきであると。私が、政治学の世界に足を踏み入れた15年程前、最も重要な問は「戦争」でした。世界史における2002年という瞬間は、9.11の同時多発テロが発生し、イラク戦争の開戦前夜でした。

 2017年という瞬間にあっても、「戦争」の影は我々の世界を覆っています。だから、本メルマガでも、アメリカについて、東アジアの変化について、日本の外交・安保政策についてみていきます。けれど、それと同じくらい大事かもしれないもう一つの問いが、「資本主義」だと思うのです。

 資本主義という言葉ほど、いろんな意味を込められて、勝手気ままに使われてきた概念はないかもしれません。メディアでも、学術の世界でも、資本主義≒自由競争≒チャンスというポジティブな発想から、資本主義≒弱肉強食≒支配/隷属というネガティブな発想まで、立場によって真逆の含意が存在します。何とも捉えどころがなく、悩ましい概念なのです。

 資本主義には多様な定義があるけれど、その最も根本的な原則として、「私有財産の保護」と、「契約自由」二つの原則があることには、それほど争いはないでしょう。したがって、いろいろな修正はあるにせよ、我々が生きる日本社会も、大部分の国際社会も資本主義社会です。

■時代観の中における資本主義

 我々が生きている現在をどのような「時代」として切り取るかについて正解はありません。主要な発想の一つとして、「戦後」と定義することで1945年という時点に着目する見方があります。米国という国の存在感や国連や世銀/IMFをはじめとする国際社会の仕組みに着目すれば、一つの妥当な区分です。国内的には、日本国憲法という一つの形になったものが存在します。そのように時代を捉えるとすると、資本主義についての一つの方が見えてきます。

「戦後」世界の資本主義とは、まずもって復興を成し遂げるための仕組みでした。戦争を戦った兵士や国民に、社会として報いなければいけませんでした。共産主義陣営との冷戦が始まることで、資本主義陣営の方が、経済成長においても公平な分配においても、より優れた制度であることを証明しなければならないというプレッシャーもありました。先進各国では、同時進行的に福祉国家化が進みます。

 米国では、復員兵に教育を授けるための“GIビル”が採用され、その後の中産階級の礎が築かれます。英国ではNHSが誕生し、国民皆保険制度が実現します。日本国内でも、50年代までは復興に焦点が当たっていたものの、1959年には国民年金法が成立しています。今から、振り返った時、20世紀後半は「資本主義の黄金時代」と言われます。貧富の差は縮小し、世界経済は成長局面にあり、特に先進国では人々の生活水準が飛躍的に高まりました。

 今現在語られている資本主義論の多くは、20世紀後半を一つの理想形とし、そこからの逸脱を批判する形をとります。世代的に、60代以上の論者にはどうしてもこの傾向が強いように思います。自分が育った時代を基準に、「世界がおかしくなっている」、あるいは「資本主義が変質している」と発想するのです。高齢化が進む現代においては、頭数においても社会的権威においてもこの世代の声は大きいので、多くの人が慣れ親しんだ資本主義観ではないでしょうか。

 時代を捉える枠組みについては他にもあります。現代を、「冷戦後」として捉える向きにも一定の説得力があります。東西両陣営が体制を競い合う時代が終わったことで、我々が世界を認識する方法が大きく変化したからです。共産主義や社会主義は、人々の平等にする上でも、豊かにする上でもあまり優れた仕組みではありませんでした。ただ、その最大の罪は自由を抑圧したことでしょう。人間の苦しみを人数に換算することが適切であるかどうかは別にして、20世紀最大の自由の抑圧がスタリーン支配下のソ連や、毛沢東支配下の中国で起きたことは争いようがありません。90年代初頭に、これらの体制が倒れ、あるいは変質していったとき、それは人類にとっての福音であるという空気が確かにあったのです。

 この時代観を下に資本主義を捉えると、資本主義、あるいはその中心的な概念である「市場」という仕組みが持つメカニズムを是認する特徴があります。市場は、情報伝達という点でも、資源配分という点でも、自由選択という点でも、優れた特徴を有していると。ただし、市場がその機能を適切に果たしていくためにはいくつかの前提があるから、その前提が確保されることが重要であると。具体的には、市場の機能を歪める既得権や規制、独占や寡占こそと戦わねばならないと。社会の中に存在する課題のどこまでを「市場」に委ね、どのように「市場」を設計するか。

 この世界観に立つ論者の特徴は、資本主義をめぐる課題設定が、具体的で、実務的であること。主流派経済学者やエコノミスト、起業家や金融プロフェッショナルのほとんどがこの種の発想を採用していると言ってもいいでしょう。もちろん、この世界観は、「戦後」という発想と矛盾するものとは限りません。現代が、「戦後」であり、かつ、「冷戦後」でもあるように、資本主義についても、20世紀後半的なゴールを目指して、実務的に市場を設計していこうという発想はあり得るからです。

■パワーバランスや技術を踏まえた世界観

「戦後」や、「冷戦後」という時代観から、さらに直近のトレンドを入れ込んで「グローバル」な時代という枠組みで世界を見ることもできるでしょう。時代を画する基準をヒト・モノ・カネ・情報が自由に世界中を飛び回るようになった事実に求める発想です。ここで重要な点は、グローバルな性質を持つ活動の量的な拡大です。20世紀初頭には冒険家の時代は過ぎ去り、地球上の人類未踏の地はほぼなくなっていたのだから、その時から、ある意味グローバルではあったのだけれど、量的な拡大は質的な変化を伴うという現実に着目しているのです。

 グローバルな時代は、政治的なパワーバランスが大きく変化する時代でもあります。欧米や日本などの先進国の影響力は相対的に低下し、新興国の存在感がどんどん大きくなっていく。特に、グローバルな社会の方向性を決定づける因子の中で、米国という国の存在感が相対的に小さくなっていく。ただし、米国の影響力の埋める因子が何であるのかははっきりしません。米国企業を含めた影響力は引き続き大きく、むしろ拡大している気もする。プレイヤーが増え、ルールが固まっていないゲームが戦われている状況です。

 ただ、いろいろと変化が起きている中ではっきりしていることもあります。グローバルな資本主義の下では、先進国においてグローバルな経済とつながっていない人々は相対的に貧しくなっていること。

 世界の絶対的貧困は大幅に減少し、世界経済は成長を続け、グローバリゼーションの結果として豊かになっている人の頭数は圧倒的に増えているけれど、資本主義をめぐる言説は先進国の中産階級の感覚知に引きずられがちです。

 技術の変化を踏まえた世界観を持つことも可能です。18世紀半ばに英国で本格化した産業革命が、20世紀前半における大量生産の時代、20世紀後半的な情報化の時代を経て、さらに変化のスピードを上げているという発想です。21世紀前半とは、情報化が進展した基盤の上にネットワーク化が進展する時代。そこに、定義や影響の全容さえはっきりしない人工知能という技術がさらに上乗せされることで、様々な可能性が感じ取られる時代です。

 技術を中心とする世界観は、超長期の視点を持つほど説得力が増します。技術進歩が最も基礎的な指標である経済成長とその結果としての人口に直結してきたからです。人類の歴史を捉えたとき、百万年単位で続いた狩猟採集の時代が農耕の時代へと移り変わったのは約1万年前。時を同じくして生産性は飛躍的に高まり、人口が急増を始めます。同様に、人類の主要な営みが農耕から産業へと変化するのと時を同じくして、生産性は高まり人口増加率も一段と高まりました。

 時代を動かしているのは技術であって、政治や経済の仕組みや登場人物は、取り換えがきくという技術決定論には魅力があるのだけれど、こと資本主義について考える時にはちょっと注意が必要です。というのも、技術と資本主義という仕組みが連関して進歩しているから。農耕を通じて人類は初めて富を蓄積することが可能となりました。産業革命は大量の資本を必要としたため、資本主義という仕組み抜きには考えられなかったでしょう。大量生産の時代も、情報化の時代も、ネットワーク化と人工知能の時代もまた、その時代の資本主義に変容を迫り、資本主義の形態によって技術もまた影響を受けるのです。

 技術の進歩と伝播のフロンティアに立つとき、重要な問は、この時代に富を生む源泉は何かということだろうと思います。技術の動向が、富の創出にとって決定的に重要であるからです。そして、資本主義という仕組みが、富の創出と配分の双方を包含するものである以上、現在及び将来の技術進歩のあり方が資本主義にどのように影響するかを考えずにはいられないということです。

■だれも資本主義と向き合えなくなった

 資本主義についての見方が、どのような時代観を持っているかによって影響されることを見てきました。資本主義への見方は立場によって変わります。何を「自由」と考え、何を「平等」と考えるかも立場によって変わってきます。であるからして、私自身は資本主義を語ることは政治そのものであると思っています。ところが、現代の社会はなかなかそういう風にできていません。

 社会の専門化と蛸壺化が進展して、政治学や経済学はそれぞれの専門領域に深化しています。この深化は、残念ながら他から目を背ける形で進行してしまっています。アダム・スミスが『諸国民の富』を書いた時、彼は近代経済学の祖となったと同時に、自由主義の政治思想に決定的に重要な礎を提供しました。政治的自由は、経済的自由と結びつくことによって強靭になり得たのです。

 ケインズが古典派経済学に修正を加えたとき、同時に福祉国家の時代が幕を開け、各国の政治もまた決定的に変化したのでした。20世紀の政治は、ケインズの発想を権力をめぐる営みである政治の中に落とし込んでいく過程であったと総括しても良いくらいです。マルクス経済学の行き詰まりも、新自由主義経済学の復興も、行動経済学のフロンティアも、我々が日々考察する政治に対して大きな影響があります。

 資本主義へ姿勢や態度が、人々の世界観や政治的な立場から変化するものであることは、ご理解いただけたと思います。本稿では、とても政治的なテーマとしての資本主義について追いかけていきます。

 今日はここまでです。どうぞ、お付き合いよろしくお願いいたします。

◆その他レギュラーコーナー
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・今週のとっておき
  

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三浦瑠麗(みうら・るり)

1980年生まれ。国際政治学者、法学博士、東京大学政策ビジョン研究センター講師。専門は安全保障を中心とした国際政治で、鋭い切り口に定評がある。テレビ、新聞など各メディアでコメンテーターとしても活躍。著書に『シビリアンのための戦争』『日本に絶望している人のための政治入門』『国民国家のリアリズム』など。
・公式ブログ「山猫日記」( http://lullymiura.hatenadiary.jp/

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